社会人になってから、職場のすすめや知人の紹介で「とりあえず」入った保険。そのまま見直さずに毎月の保険料だけ払い続けていませんか。
はじめに
保険は家計の中でも固定費として大きな割合を占めやすく、内容が複雑なぶん「よく分からないからそのまま」が起こりやすい分野です。この記事では、お金日和らしく「やさしく・実用的に」、今ある保険をシンプルに整理する方法をお伝えします。
1. まず知っておきたい「公的保険」の守備範囲
保険を整理する前に、「すでに国から用意されている保障」がどれくらいあるのかを知ることがとても大切です。代表的なものは次のとおりです。
- 健康保険(協会けんぽ・組合健保・共済など)
- 国民健康保険
- 公的年金(国民年金・厚生年金)
- 雇用保険
- 労災保険
公的医療保険のポイント
日本の公的医療保険には、次のようなしくみがあります。
- 医療費の自己負担は原則3割
- 一定額を超えた分があとから戻ってくる「高額療養費制度」
- 会社員なら、休職中の収入を一部補う「傷病手当金」制度があることも
【具体例】高額療養費制度のイメージ
例:会社員Aさん(標準的な所得)が、1か月の医療費100万円の手術・入院をした場合
1. 病院の窓口では3割負担なので、一旦30万円を支払う
2. その後、高額療養費制度により、自己負担上限額を超えた分が後日払い戻される
実際の上限額は所得や年齢で異なり、毎年のように見直しがありますので、最新情報は加入している健康保険組合や協会けんぽ、厚生労働省のサイトで必ず確認してください。
公的年金・遺族年金・障害年金
- 亡くなったとき:遺族年金
- 障害状態になったとき:障害年金
一定の条件を満たすと、これらの年金が支給される可能性があります。民間の死亡保険・医療保険を考えるときは、「公的年金でどれくらいカバーされるか」を踏まえたうえで、足りない部分を補うという考え方がおすすめです。
2. 今入っている保険を全部「見える化」する
整理の第一歩は、どんな保険に入っているかを把握することです。ファイルや封筒のまましまい込んでいる方も、ここで一度すべて出してみましょう。
書き出す項目の例
紙でもExcelでも良いので、次のような表を作ってみてください。
- 保険の種類(生命保険・医療保険・がん保険・学資保険・自動車保険など)
- 保険会社名
- 契約者/被保険者
- 月々(または年払い)の保険料
- 保険期間(いつまで続くか)
- 主な保障内容(死亡保障額・入院日額・保障される病気やケガなど)
- 加入した理由(当時なぜ入ったか)
【具体例】一覧表イメージ
例:30代共働き・子ども1人の世帯
• 生命保険A:夫、月8,000円、死亡保障2,000万円、定期保険、子ども誕生時に加入
• 医療保険B:妻、月4,000円、入院1日5,000円、がん特約あり、社会人1年目で加入
• がん保険C:夫、月3,000円、がん診断一時金100万円、親にすすめられて加入
• 自動車保険D:家族全員、月7,000円、対人・対物無制限
こうして一覧にするだけでも、「同じような保障が重なっている」「保険料が意外と多い」といった気づきが生まれます。
3. 家族構成別に「いま本当に必要な保険」を考える
必要な保障の大きさは、独身・夫婦のみ・子育て中・子ども独立後など、ライフステージによって変わります。
独身(扶養家族なし)の場合
- 死亡保障:葬儀費用や身辺整理費用をまかなえる程度でよいことが多い
- 医療保障:公的医療保険+貯蓄でどこまで備えられるかを検討
共働き夫婦(子どもなし)の場合
- どちらか一方が亡くなっても、もう一方の収入で生活が成り立つかを考える
- 住宅ローンがある場合は、団体信用生命保険(団信)の有無を確認
子育て中の家庭の場合
- もっとも大きな保障が必要な時期
- 遺された家族の生活費・教育費・住宅費をカバーできるかがポイント
【具体例】必要な死亡保障の考え方イメージ
例:夫(会社員・年収500万円)、妻(パート・年収120万円)、子ども2人(5歳、2歳)
1. 子どもが独立するまでの生活費の不足分
2. 教育費(高校・大学など)の目安
3. 住宅ローンの団信でカバーされる分を差し引き
これらをざっくり試算し、公的遺族年金で賄える部分を除いた「不足分」を民間の生命保険で補う、という考え方が一般的です。
※具体的な金額はご家庭の収入・支出・教育方針によって大きく変わります。おおまかなシミュレーションを家計簿やライフプラン表で行うことをおすすめします。
4. 「貯蓄」と「保険」を混ぜすぎない
日本では「貯蓄型保険」も人気ですが、保険と資産形成の役割は分けて考えると整理しやすくなります。
- 保険:もしものときの経済的なダメージをカバーするもの
- 貯蓄・投資:将来のためのお金を増やしていくもの(NISA・iDeCoなど)
貯蓄を兼ねた保険は、解約すると元本割れする期間が長かったり、柔軟に見直しにくい場合もあります。「保障が足りないから保険」「将来に向けてお金を育てたいからNISA・iDeCo」と分けて考えると、家計全体がすっきりします。
5. 今週できる「保険整理のチェックリスト」
1週間で一気に完璧にする必要はありません。まずは小さな一歩からはじめましょう。
今週のチェックリスト
- [ ] 保険証券・契約書類を一か所にまとめる
- [ ] 現在加入している保険をすべて書き出す
- [ ] 毎月(または年)どれくらい保険料を払っているか合計する
- [ ] いまの家族構成を書く(独身・夫婦・子育て中・子ども独立後など)
- [ ] 公的医療保険の「高額療養費制度」をネットで一度確認する
- [ ] 勤め先の「傷病手当金」「団体保険」の有無を確認する
このチェックリストを終えたら、「保険が足りないかも」「むしろ多すぎるかも」という感覚が見えてきます。
6. 気をつけたいポイント(よくある勘違い)
1. 「保険にたくさん入っていれば安心」は本当?
保障が重なりすぎて保険料が家計を圧迫してしまうと、本末転倒です。「足りないところだけを、必要な期間だけカバーする」のが保険の基本的な考え方です。
2. 「若いときに入ったから、そのままの方が得」は本当?
若いときに加入すると保険料が安くなることはありますが、ライフステージが変わると必要な保障も変わります。不要な特約や過大な保障をそのままにしていると、結果的に高くつくこともあります。
3. 「保険は一度入ったらずっと同じでOK」ではない
結婚・出産・住宅購入・転職など、大きなライフイベントがあったら保険の見直し時期です。少なくとも3〜5年に一度は内容を確認し、「今の自分たち家族」に合っているかを点検しましょう。
7. まとめ
- まずは公的保険の守備範囲を知ることが、保険整理の出発点です。
- 今入っている保険をすべて書き出し、保険料と保障内容を「見える化」してみましょう。
- ライフステージごとに必要な保障は変わります。独身時代のまま、子育て期を迎えていないか確認を。
- 「保険で貯める」のか「NISAやiDeCoで増やす」のか、目的ごとに分けて考えると家計が整理しやすくなります。
少し手間はかかりますが、一度しっかり整理しておくと、今後の見直しもぐっと楽になります。今週のチェックリストから、できるところだけ一つでも取り組んでみてください。
参考資料
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」https://www.mhlw.go.jp/
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)ホームページ https://www.kyoukaikenpo.or.jp/
- 日本年金機構「遺族年金・障害年金のご案内」https://www.nenkin.go.jp/
- 金融庁「知るぽると(金融広報中央委員会)」https://www.shiruporuto.jp/


