「もし入院したら、お金が心配だから」と、なんとなく医療保険に入っている方は多いのではないでしょうか。一方で、「公的な医療保険があるから、医療保険はいらない」という声も耳にします。
はじめに
どちらが正しいとは一概には言えません。大切なのは、日本の医療制度でどこまでカバーされるのかを知ったうえで、自分や家族にとって必要な備えを選ぶことです。
この記事では、日本の公的医療保険制度を前提に、医療保険の役割と見直しのポイントを整理していきます。
1. 日本の公的医療保険でできること
日本では、ほとんどの人がいずれかの公的医療保険に加入しています。
- 会社員・公務員:協会けんぽ、健康保険組合、共済組合など
- 自営業・フリーランスなど:国民健康保険
基本的な負担割合
- 病院の窓口で払う医療費は、原則として3割負担(年齢や所得により異なる場合あり)
高額療養費制度
1か月の自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超えた分があとから払い戻される仕組みです。上限額は年齢や所得によって異なり、制度内容も随時見直されています。
【具体例】高額療養費のイメージ
例:40代会社員Bさん、1か月で100万円の医療費がかかった場合
• 窓口では一旦3割の30万円を支払う
• その後、高額療養費制度の上限額との差額が払い戻される
実際の自己負担額はBさんの所得などにより変わりますので、詳細は加入している健康保険や厚生労働省の情報で必ず確認してください。
会社員に多い「傷病手当金」
- 業務外の病気やケガで働けなくなったとき、給与の一部が一定期間支給される制度
- 支給条件や金額、期間は加入している健康保険によって異なります
このように、日本の公的医療保険はかなり手厚い側面もあります。
2. 医療保険の役割とは?
それでも多くの人が医療保険に入る理由は、「公的保険ではカバーしきれない部分」を補いたいからです。主なポイントは次の3つです。
入院時の自己負担分や差額ベッド代など
働けない間の収入減少
心理的な安心感
差額ベッド代とは
- 個室や少人数部屋を希望した場合にかかる追加費用
- 公的医療保険の対象外のため、全額自己負担
入院時、「できれば個室がいい」「家族が面会しやすいほうがよい」と考える場合には、その費用をどう準備するかもポイントになります。
3. 自分に医療保険が必要か考える3つの視点
視点1:貯蓄額
- 「いくらまでなら、貯蓄で医療費をまかなえるか」を考える
- 生活防衛資金(生活費◯か月分)と医療費の両方を貯蓄でカバーできるかが目安
【具体例】貯蓄でどこまで備えられるか
例:世帯の生活費が月25万円、貯蓄300万円の家庭
• 生活防衛資金として6か月分=150万円を確保すると仮定
• 残り150万円までなら、医療費や一時的な収入減に対応できる
このケースでは、150万円を超えるような長期入院や高額な自由診療が必要になるかどうか、どれくらい安心したいかによって医療保険の必要度が変わってきます。
視点2:家族構成と支える人の有無
- 独身で実家暮らし:いざというときに家族のサポートを得やすい
- 子育て中:入院期間中の子どもの預け先や家事代行費用なども考慮が必要
- 高齢の親の介護中:自分が倒れると介護の代わり手が必要になる
視点3:働き方と収入の安定度
- 正社員で傷病手当金あり:一定期間は収入がある程度補われる
- 自営業・フリーランス:収入がゼロになるリスクが高い
- 歩合制など収入変動が大きい職種:長期の療養で大きく収入が減る可能性
自営業やフリーランスの方は、医療保険というより「所得補償保険」「就業不能保険」などで収入の減少に備える選択肢もあります。
4. 医療保険を見直すときの具体的ステップ
ステップ1:現在の医療保険を整理する
- 入院日額はいくらか
- 何日目から保障されるか
- 入院以外に、通院・手術・先進医療などの保障があるか
- 保険料と保険期間
ステップ2:公的保険+貯蓄でどこまでカバーできるか確認
- 高額療養費制度の上限額をざっくり知る
- 勤め先の傷病手当金の有無・内容をチェック
- 貯蓄額と生活防衛資金のラインを把握
ステップ3:過不足を埋めるイメージで考える
- 「このくらいの入院があっても家計は大丈夫」と思えるラインを考える
- その差を医療保険でどの程度カバーしたいかを検討
5. 今週できる「医療保険見直しチェックリスト」
今週のチェックリスト
- [ ] 健康保険証の裏面や、加入している保険組合のサイトを見て、高額療養費制度を確認する
- [ ] 職場の就業規則や人事部門に、傷病手当金の有無を確認する
- [ ] 現在の医療保険の「入院日額」「支払限度日数」「特約」をメモする
- [ ] 手元の貯蓄額と、生活費◯か月分を計算してみる
- [ ] 「どこまでを貯蓄で、どこからを保険で備えたいか」をざっくり書き出す
5つすべてでなくても、1〜2個でも進めてみることで、「なんとなく不安だから医療保険」という状態から一歩抜け出せます。
6. 気をつけたいポイント
1. 「入院日額が多いほど安心」とは限らない
入院日数は医療の進歩とともに短くなる傾向があります。日額よりも、支払限度日数や一時金の有無など、トータルでいくらくらい受け取れる可能性があるかを見ることが大切です。
2. 「過去に入院したから、もっと増やさなきゃ」と焦らない
一度入院を経験すると不安が大きくなり、保障を増やしたくなりがちです。ただし、家計全体のバランスを崩しては本末転倒です。貯蓄や他の保険との兼ね合いも含めて冷静に検討しましょう。
3. 「先進医療」「がん特約」など魅力的な言葉に飛びつかない
先進医療や特約は有効な備えになる場合もありますが、実際の利用件数や必要性は人によって大きく違います。「なんとなく不安だから全部つける」のではなく、保険料とのバランスを見ながら検討しましょう。
7. まとめ
- 日本の公的医療保険は、高額療養費制度や傷病手当金など、もしものときの備えが充実しています。
- 医療保険の役割は、公的保険と貯蓄でカバーしきれない部分を補うことです。
- 貯蓄額・家族構成・働き方の3つの視点から、自分にとって医療保険がどれくらい必要かを考えてみましょう。
- 見直しは一度で完璧にしなくても大丈夫です。今週のチェックリストから、できることを少しずつ進めてみてください。
「なんとなく不安だから入る」から「わが家にとって本当に必要だから選ぶ」へ。そんな医療保険との付き合い方を、ぜひ目指してみてください。
参考資料
- 厚生労働省「公的医療保険制度について」https://www.mhlw.go.jp/
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額療養費制度」https://www.kyoukaikenpo.or.jp/
- 金融広報中央委員会 知るぽると「病気やケガへの備え」https://www.shiruporuto.jp/


