老後のお金について考えるとき、「いくら貯めればいい?」というゴールの金額ばかりが気になりがちです。
ですが、実際の暮らしでは「毎月いくらあれば、今と同じように落ち着いて暮らせるか」をイメージすることが、とても大切です。
この記事では、現役で働いている会社員・公務員・共働き世帯の方向けに、「老後に必要な毎月の生活費」と「公的年金でどこまでカバーできるか」をやさしく整理していきます。
最後に、今週からできる簡単チェックリストもご用意しましたので、ぜひ手元の家計簿や給与明細と一緒に読み進めてみてください。
老後資金づくりは「トータル額」より「毎月の赤字」を意識する
老後のお金というと、「老後までに○○万円必要」という数字が話題になります。
ですが、ご家庭ごとの暮らし方や地域、持ち家か賃貸かによって、必要額は大きく変わります。
そこで意識したいのが、
- 老後の「毎月の支出(生活費など)」
- 老後の「毎月の収入(公的年金+その他)」
の差、つまり「毎月の赤字(もしくは黒字)」です。
この「毎月の赤字 × 想定する老後の年数」が、ざっくりとした老後資金の目安になります。
具体例(イメージ用の例です)
- 老後の毎月の支出:25万円
- 毎月の公的年金:20万円
- 毎月の不足額(赤字):5万円
老後を25年と仮定すると、
- 不足するトータル額:5万円 × 12か月 × 25年 = 1,500万円(例)
となります。
一見すると大きな金額ですが、「老後の不足分は、現役のうちに毎月いくら積み立てればよいか?」という形に分解すると、やるべきことが少し見えやすくなります。
また、「老後の支出を少し抑えられないか」「働く期間を少し伸ばせないか」という選択肢も見えてきます。
公的年金が「いくら入りそうか」をざっくり把握する
老後の土台となるのは、公的年金(国民年金・厚生年金)です。
まずは「自分(と配偶者)が、将来どのくらい年金を受け取れそうか」を把握しておくことが重要です。
ねんきん定期便・ねんきんネットで確認
日本年金機構から毎年届く「ねんきん定期便」や、「ねんきんネット」で、将来の年金見込み額を確認できます。
- 50歳未満:現時点までの加入実績に応じた試算額
- 50歳以上:現在と同じ条件で60歳まで加入したと仮定した試算額
が記載されています。
ここで確認した金額は「65歳から受け取る場合の月額イメージ」として、老後の収入の中核になります。
実際には、年金受給額は税金や社会保険料の控除後の手取りになるため、手取りベースで考えると、さらに少し目減りする点に注意が必要です。
夫婦世帯での考え方
共働き世帯や、会社員+パートの世帯では、
- 夫の老齢厚生年金+老齢基礎年金
- 妻の老齢厚生年金(勤務状況による)+老齢基礎年金
の合計が、公的年金のベースになります。
【イメージ例】
- 夫:老齢厚生年金+老齢基礎年金 合計 14万円/月(見込)
- 妻:老齢基礎年金のみ 6万円/月(見込)
- 合計の公的年金:20万円/月(見込)
このように、夫婦それぞれの見込み額を足し合わせて「世帯ベース」で考えるのがポイントです。
配偶者の年金額は見落としがちなので、ねんきん定期便をそれぞれ確認しておきたいところです。
わが家の「老後の毎月の生活費」をイメージしてみる
次に、「老後に毎月いくらあれば、安心して暮らせそうか」を考えます。
いきなり老後の金額を考えるのは難しいので、「今の生活費」から調整してイメージするのがおすすめです。
現役時代との違いを整理する
老後と現役時代では、次のような費目が変化しやすいです。
- 減ることが多いもの
- 通勤費・仕事に関連する支出
- 子どもの教育費
- 住宅ローン(退職前に完済する場合)
- 増えることが多いもの
- 医療費・介護関連費
- 趣味・旅行などの余暇費(時間が増えるため)
これらを踏まえて、「今の家計から何が減って、何が残り、何が増えそうか」をざっくり書き出してみましょう。
簡単な計算の流れ(例)
【現役の毎月の支出】
- 手取り収入:35万円
- 毎月の支出:35万円(黒字・赤字ゼロと仮定)
- 教育費:5万円
- 住宅ローン:3万円
【老後に不要になりそうな支出(例)】
合計:8万円
【老後に増えそうな支出(例)】
- 医療・健康関連費:+1万円
- 趣味・交際・旅行費:+1万円
合計:2万円
この場合、
- 現役時代の支出:35万円
- 老後に減る分:▲8万円
- 老後に増える分:+2万円
→ 老後の毎月必要な生活費の目安:35万円 − 8万円 + 2万円 = 29万円(例)
となります。
この「29万円(例)」と先ほどの「公的年金の見込み額」とを比べて、「毎月の赤字(不足分)」を把握します。
「毎月の不足分」をどう埋めていくかを考える
老後の毎月の不足分は、主に次の3つの組み合わせでカバーしていくイメージになります。
現役時代の貯蓄・投資の取り崩し
退職金など一時金の活用
老後も少し働く(再雇用・パートなど)
それぞれ、特徴を整理してみます。
1. 貯蓄・投資の取り崩し
現役のうちからコツコツ貯めたお金を、老後に少しずつ取り崩して使っていく形です。
銀行預金のほか、NISAやiDeCoなどで運用した資産も含まれます。
【イメージ例】
- 老後の毎月の不足分:5万円
- 老後年数:25年
→ 必要な取り崩し総額:1,500万円(例)
現役時代の残り年数や、無理のない毎月の積立額を考えつつ、何年かけて、どの程度のペースで準備するかを検討していきます。
運用商品を利用する場合は、元本割れのリスクもあるため、「絶対に増える」と考えず、余裕を持った設計にすることが大切です。
2. 退職金の位置づけ
退職金は、多くの方にとって「老後資金のスタート地点」となります。
その一部を生活費の不足分の補填に回しつつ、一部を住宅リフォームや車の買い替えなどの大きな支出に備える、というような使い分けを考えます。
退職金は税制上の優遇もあるため、受け取り方(退職一時金・企業年金など)によっては、年末調整や確定申告の知識が必要になるケースもあります。
受け取り時期が近づいてきたら、会社からの案内や国税庁の情報を確認しておきましょう。
3. 老後も少し働く選択肢
老後の毎月の不足分を「すべて貯蓄でまかなう」と考えると、必要な準備額が大きくなり、現役時代の負担も重くなりがちです。
- 65歳以降もパートや嘱託として月数万円稼ぐ
- 健康に無理のない範囲で短時間勤務を続ける
といった形で、老後も少し働くことで、不足分を小さくすることも選択肢です。
【イメージ例】
- 老後の不足分:5万円/月
- 週2〜3日のパート収入:3万円/月
→ 貯蓄からの取り崩しは、2万円/月で済む
こうした「働き方の柔軟性」を含めて考えると、老後資金づくりの心理的ハードルが少し下がることもあります。
今のうちからできる「老後マネーの整え方」
老後資金づくりは、「特別なことをする」よりも、「今の家計の土台を整える」ことが基本になります。
1. 家計の固定費を見直して余力をつくる
老後のお金以前に、現役時代の家計がギリギリだと、なかなか将来のための積立ができません。
まずは、
- 通信費(スマホ・インターネット)
- 保険の掛けすぎ(必要保障額の確認)
- 使っていないサブスク
などの固定費を見直して、毎月1万円でも余力をつくることが、老後資金づくりの第一歩になります。
2. 「老後の積立用口座」を分けておく
毎月の給与から自動的に「老後のための積立口座」にお金が移るように設定しておくと、無理なく続きやすくなります。
- 給与振込口座とは別の銀行口座に「老後用」として積み立てる
- 積立NISAやiDeCoなど、長期前提の商品と組み合わせる
といった形で、「日常の支出用」と「老後のための資金」を混ぜないことが、目標の見える化につながります。
金融商品の利用にあたっては、金融機関の説明資料や金融庁のサイトなどで仕組みやリスクを確認し、「理解できる範囲で・無理のない金額で」始めることが大切です。
3. 所得控除や税制優遇も“味方”にする
老後資金づくりは、税金との付き合い方次第で手取りが変わってきます。
- iDeCoの掛金が所得控除になる
- NISA口座での運用益が非課税になる
- ふるさと納税で実質負担2,000円で返礼品が受け取れる(上限に注意)
などの制度を活用すると、「同じ手取りの中でも、将来のために回せる金額」を増やせる可能性があります。
ただし、これらの制度は制度変更が行われることもありますので、最新の情報を金融庁や国税庁などの公的機関のサイトで確認しながら利用するようにしましょう。
今週できる「わが家の老後チェックリスト」
今週末、30分だけ時間をとって、次のことをやってみてください。
- ねんきん定期便を取り出して、自分の将来の年金見込み額を確認する
- 配偶者がいる方は、配偶者分もあわせて「世帯の公的年金見込み額(合計)」をメモする
- 直近1か月の家計簿(または通帳・家計アプリ)から、「老後にはなくなりそうな支出」と「老後も続きそうな支出」を3つずつ書き出す
- 「今の生活費 − 老後になくなりそうな支出 + 老後に増えそうな支出」で、老後の毎月の生活費をざっくり計算してみる
- 計算した「老後の生活費」と「公的年金の見込み額」の差を出して、「わが家の毎月の不足イメージ額」をメモする
ここまでできれば、「老後がなんとなく不安」から「わが家は毎月○万円くらい足りなさそう」という、具体的なイメージに一歩進めます。
気をつけたいポイント(よくある勘違い)
老後資金づくりで、つまずきやすいポイントも確認しておきましょう。
1. 「公的年金はあてにならないから、自分で全部用意するしかない」と思い込む
公的年金制度には課題もありますが、「終身で受け取れる」という点は、民間の商品では完全に代替しづらい重要な役割です。
「ゼロになる」と決めつけてしまうと、現役時代の負担が過度になり、家計が苦しくなってしまいます。
公式な情報(日本年金機構や厚生労働省)を確認しながら、「現実的な範囲で何を補うべきか」を考えることが大切です。
2. 「退職金があるから大丈夫」と細かい試算をしない
退職金の見込み額だけを頼りにしていると、
- 税金・社会保険料の負担
- 住宅ローンの残債やリフォーム費用
- まとまった医療費・介護費用
などで、思ったよりも早く減ってしまう可能性があります。
退職金は「老後資金のすべて」ではなく、「スタート地点の大きな一部」として考え、毎月の不足分とのバランスを見て計画を立てておきたいところです。
3. 老後資金を「短期で増やそう」とリスクを取りすぎる
老後資金を増やしたい一心で、仕組みのよくわからない投資商品や、短期で大きな値動きをする商品に大きな金額を投じてしまうと、元本割れのリスクが高まります。
- 自分が理解できる範囲のものだけを選ぶ
- 生活費用や緊急資金とは分ける
- 勤務先の福利厚生や公的制度も含めて、全体のバランスを考える
といった基本を崩さないことが、長い老後を安心して乗り切るためのポイントです。
まとめ:老後のお金は「数字を出すところ」から不安が小さくなる
老後のお金について考えるとき、
「いくらあれば安心なのか、まったくわからない」
という状態が、いちばん不安を大きくします。
- 公的年金の見込み額を知る
- 老後に必要な毎月の生活費をざっくり計算する
- その差(毎月の不足分)を、貯蓄・退職金・老後の働き方でどう埋めるかを考える
という3ステップを踏むことで、「なんとなく不安」から「わが家はこうしていけばよさそう」という実感に少しずつ近づいていきます。
制度や税制は変わる可能性があるため、定期的に日本年金機構や金融庁、国税庁などの公的な情報もチェックしながら、数年に一度は見直していくことがおすすめです。
完璧な答えを一度で出そうとせず、「今日より明日、少しだけイメージが具体的になる」くらいのペースで、ご家庭に合った老後マネープランを育てていきましょう。
参考資料
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毎年送付されるねんきん定期便の見方や記載内容について解説しています。
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